SESSON BLOG
2018年7月6日
JOYO ARC 2018年 に掲載していただきました!
全文こちらです↓
私が経営するフレンチレストラン「雪村庵」では、コンセプトを “茨城ガストロノミー” としています。ガストロノミーは、通常、美食術や美食学と訳されることが多いようですが、自分自身が思う茨城ガストロノミーとは、自然・茨城食材・器・その季節にあった調理法のすべてが合わさって完成する料理と考えております。
まず、自然と茨城の食材についてですが、実は常陸大宮市に店を構えた理由がここにあります。土地の気候・風土の影響を受けやすい野菜は、寒暖の激しい土地で栽培すると味にメリハリのついたものが育ちます。そのため、同市御前山地区の山あいにある無農薬栽培農家から頂く野菜を、収穫したての新鮮なうちに料理として提供したいと思い、生産現場に近いこの地に店を構えています。
また、食の提供という視点でみれば、料理人と食材を育む生産者は一体であるとの信念から、ホームページには “チーム” として生産者の方たちを紹介しています。
器は地元の著名な陶芸家に、料理のイメージを共有し当店オリジナルの器を焼いてもらっています。料理は味や香りのほかに視覚へのメッセージも重要であり、料理に合った器を使ってこそ、料理自体も生きてくるものと考えております。
さらに、季節に合った旬の食材を、料理人が調理することでさらに付加価値をつけ、お客様に非日常的な食の体験をしてもらうことは、我々料理人にとっての醍醐味であり、絶えず挑戦し続けたいと思っています。
都心から当店まで片道2時間かかります。その時間のコストを上乗せしても来てよかったと思っていただかなければなりません。そういう意味では、地産地消を越えてここに来なければ体験できないオンリーワンの料理を提供する責任があると感じています。地域がひとつのチームになって魅力的な料理を提供することを意識した時、私には理想とするまちがあります。それはスペインの北部バスク地方にあるサン・セバスチャン、世界一とも言われる美食のまちです。その特徴のひとつは、料理人たちが苦労して覚えたレシピを共有し、お互いを高め合っていることです。
料理人にとって、レシピを他人に教えることは大変勇気のいることです。しかし、このまちでは全体の料理のクオリティを高めるためにお互いに協力し、料理人がレシピを教え合っているというのです。転じて本県はというと、ノウハウなどの情報をクローズしがちな土地柄ではないでしょうか。しかし、個々の力では大都市に及ばない地方だからこそ、偏狭な考えを打破し、仲間同士が切磋琢磨することで地域ぐるみで食の価値を高めていく事が必要なのではないかと考えています。
食で人々を幸せにする常世の地。私はそんな未来のいばらきを夢見ています。